01:音楽も映像もアナログ・味時代。クリエイターと語る印鑑の魅力。

01:音楽も映像もアナログ・味時代。クリエイターと語る印鑑の魅力。

家安:山下さん、日頃やっておられる音楽とか映像の人たちに「印鑑?なんで?」とか言われません?何度も山梨に通われたりして印鑑のプロモーションビデオを撮ってくださっていますが、山下さんと印鑑のお話し、感じている魅力を聞かせてほしいです。 山下:確かに、印鑑?なんで?と言われることもありますが、実際は結構周りでも印鑑ってかっこいいよねなんて話になりますよ。印鑑を深く考えたきっかけ、手にとって印鑑っていいなと実感したきっかけは実は法人印を作った時ですね。知り合いのお父さんが文字こうをされていて、お祝いで作ってくれたんです。名前も山下って比較的シンプルなので、それまでは印鑑が繊細なものだなんて思ったことなかったのですが、手彫りのものを手にしたときに、その細やかさに感動しました。 原田:山下さんの法人印は比較的小さめサイズよね。 山下:そうですねー。しかも友人のご縁で作っていただいたこともあり、想いがこもっていて、押す時いつも特別な気持ちになれます。 原田:素材は何? 山下:なんでしょう?割と一般的なものだと。 原田:柘植だね、しかもこれは日本の柘植。樹齢40-50年ぐらいかな。 家安:そこまでわかるものなんですか?!ちなみに手彫りと機械彫りってやっぱり違うものなのでしょうか? 原田:もちろん機械彫りも高機能でレベルの高い機械がありますので、その差がわかりにくいかもしれませんが、ただ作り方に差が生まれるんですよ。専門的すぎるかもしれないけど、機械だと文字の立ち上がり、縁の部分が垂直なんですよね。でも手彫りの場合は仕上げ工程で文字を整えながら縁の部分を削り、文字の底が広く朱肉が付く面は狭くなり、例えるならハの字・堤防(土手)のようになるんです。 家安:機械ではそれはできない? 原田:機械で彫ったままでは手彫り・手仕上げのようにはなりません。機械彫りの目的は早くきれいに、でしょう?すごいことにね、この違い ってより半径が小さな印鑑でこそさらに際立つんですよ。文字の縁を整えたことによって何が生まれるか、強度です。使い続けるときに機械彫りは文字の部分が欠け易くなるのに対して、手彫りはそうなりにくい。もっと専門的に言うとあの狭い面に筆で書いた小さな文字の筆致が際立ち生き生きとしています。あくまでも持論ですがハンコは文字(デザイン)が最も大切で、そこに職人のセンスが反映されます、手彫りか機械彫りかということが先行しがちですが、それは二の次です。元々ハンコ専用の機械彫刻機が導入されたのは、手書きで書いた印章デザインの文字周りを彫る工程(荒彫り)の時間を短縮することが目的でした。決して誰でも簡単にハンコが作れるために登場した訳ではありません。しかし現在の業界は機械彫刻機の進歩によって誰でも簡単にハンコ屋を始められる状況です。この話しの深掘りは次回にしますが、もしも近隣やネット販売のハンコ屋さんで、市販フォントを使い機械で彫るだけのハンコを販売しているのであれば、安価でお求め易い一方で、それは個性の無い薄っぺらなハンコと言わざるを得ません。すみません少し熱くなりました(笑) 山下:実際にそのちょっとした事って大きな違いだなと感じていて。たとえば請求書とかも PDF デ ータで送ることも日常化していると思いますが、私は自分の印を紙に押したものをスキャンしてデータ化したものを貼り付けてメールで送る時も使っているんです。 原田:あれでしょ?手で押した時の朱肉の滲みとかもスキャンするってことですよね。 山下:そうです。わざわざ手で押したアナログなものをスキャンして請求書に貼り付けて pdf で送るなんてなぜと思われるかもしれませんが、受け取る人の反応が明らかに違うんですよ。...

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02:アナログに魅力を感じ、オリジナルが作りたい若い世代を信じて出会いの場所を作らなきゃ。

02:アナログに魅力を感じ、オリジナルが作りたい若い世代を信じて出会いの場所を作らなきゃ。

家安:山下さんと一緒に写真を撮ったり、webを国内外に向けてデザインしてくださっている嶋津さんも若い世代。そして銀行入社2年目の荒川さんも。こんな若い女性お二人にとっての印鑑ってどんな感じですか? 荒川:実はアナログなもの好きなんです。本や新聞も kindle とかよりも紙で読みたいですし、携帯でメモするよりもノートとペンが好きかもですね。印鑑は仕事で使うものは支給されているんですが、自分のものが欲しくて実はずっとここ最近探していました。簡単にその辺で買えるものではなく、材木から選んだり、文字の意味を知ったり、一つ一つ選んで作りたいんです。 原田:印鑑は一生物だもんね。 嶋津:私は小学校の卒業祝いでもらったのがきっかけなんです。和柄の小さな布箱に2本入っていて、その時には深い意味はわかっていなかったかもですが、とてもかわいくて、直感的になんだかとても宝物だと感じ、今も宝物箱に入っています。実際自分も含めて多くの人たちが印鑑のこと、あまりよく知らないのではと。どんな文字があってどんな意味があって材木の種類があってとか。本当は選べるし自分らしいものが作れるのに。 荒川:原田晶光堂の映像を事前に拝見してたんですが、普通印鑑屋さんでこんな映像作らないですよね!SNS やインスタのストーリーでみたら、何これ?って web に絶対アクセスします。大体印鑑のページってどこも同じような必要なことしか書いていませんよね。 家安:映像も用意できているし、SNS もある。もっとそこから買いやすい、一つ一つ選べるんだっていう動線を強化しなければいけないですね、社長。たとえばメガネ屋さんとかもフレームとレンズを選んで金額が出て、みたいに当たり前だけど可視化されていることで買いやすい、選べるんだということが伝わっている。原田晶光堂もそれが必要ですね。通常印鑑って最寄りの店舗で買ったり、WEB で買ったりすることが一般的ですよね。 原田:そうね、元々は各街にあった店舗さんでの購入が一般的で、その後ウエブサービスが拡大しているのが現状。私たちの責任でもあるんだけど、いずれも多くの場合セットで売ってしまっていたりしますからね。選べるっていう価値を伝えきれてないなあ。この旧六郷町の当社に来てくれる人は初めは知らないからなんかパックで買おうかななんて思いつつも、材料とか文字とかケースとか色々選べますってお伝えすると、かなりこだわったものを買って帰られる方ばかりですね。だって印鑑ケースの生地まで選べるんだよ!そう考えると、選んでちゃんと作れることもっと言っていかないとね。 荒川:自分だけのものを作りたい方いっぱいいますよね。 家安:若い世代ほどそのこだわりがあるし、価格や利便性よりも、そのための労力は惜しまない感じがしますね。 原田:印鑑が売れない時代が続いてしまって、どこか売る方も「どうせ若い人なんて印鑑を作らない」とか「高額なものは売れない」って決めつけてしまっていたのかもしれなくて、自分達がいいものだと信じ、いいものを提供したいっていう心構えを店づくりに生かしきれてないかもしれないなと。 家安:接点は SNS だったりするかもしれませんが、社長や印鑑との出会いや作るプロセスは人と人のアナログな良さを大切にしていきたいですね。...

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03:手間暇が人の魅力を作るんだよ。Genjimetalの価値ってそこじゃない?

03:手間暇が人の魅力を作るんだよ。Genjimetalの価値ってそこじゃない?

家安:原田晶光堂が最近メディアにもよく取り上げられていますし、そのきっかけとなった一つがGenjimetalというステンレスの印鑑ですね。これについてちょっと語りましょうか。荒川さん、初めて見られましたよね。どうでしょう? 荒川:すごい仕組みですね、これ!!鏡面から文字が浮かび出るんですね。映像は拝見してましたがなるほどです。 原田:印面を完全に鏡面にしたから顔が映るでしょ?山下さんのアイディアだよね。 山下:元々印鑑が押しやすいようにマット仕上げだったと思うんですが、鏡のように自分を写すものの方がいいんじゃないかと思ったんですよね。何もないところから文字が浮かび上がること。自我を表すのが名前だとすると消えることで自分が映り込み、本質が見えるみたいな。 家安:なかなか他にはない製品だと思うんですが、Genjimetalの魅力って何ですか? 嶋津:私は父にGenjimetalをプレゼントしたんですが、実はApple製品好きな人で。デザインとかものが大好きなんですね。そんな父はGenjimetal を手にしてプロダクトとしての美しさ、その重みとても喜んでくれて、書類に印鑑を押す時嬉しそうなんです。その姿を見ていて、印鑑って一生使えるものじゃないですか、それなら人生の早い段階で出会えたらいいなあと思ったんです。 家安:Genjimetal はステンレスだから欠けたりしないですしね。そこも魅力。 原田:Genjimetalってね、ともすると文字が出たり消えたりするギミックの部分がフィーチャーされがちだけど、それよりも文字、アイデンティティー、印鑑にまつわる想い、所作みたいなものの方が大切なのかもしれないなって思いますね。この印鑑は押すたびにちゃんと印面の朱肉を拭ったりメインテナンスをしなければいけないから簡単便利楽ちんな商品ではないからね。 山下:でも手間暇かかるものってよくないですか?なんでも便利な時代だからその人が大切にしている手間暇や不便さがその人を表しているって思いませんか?人柄に出る気がします。 嶋津:心の余裕が必要かもです。不便さや手間暇を愛するって。 山下:逆に心の余裕を作るためにわざわざ不便や手間暇をやっているのかもね。朝の忙しい時に簡単コーヒーもできるけど、グラインダーとドリップとか焙煎の香りを楽しむとかに時間を取る事で心の余裕が生まれるみたいに。人それぞれ何かしらの不便手間暇ポイントを持っている気がするんです。 原田:印鑑もね、簡単にポンとおせるかもしれないけど、この印鑑はまるで機械式の時計のように手入れが必要。でもさ、機械式時計って職人の技なのよ。そしてそれを毎日ネジを巻いてあげて使う楽しみってデジタルのものとは違った価値でしょう? 原田:現代のなんでも簡単便利と真逆。それが魅力で売れてるよね。Genjimetal も印鑑を押すこと、印面を丁寧に拭うこと。メインテナンスも含めてその一連で心の豊かさや所有することの優越感を感じてもらえたらいいなと。だって印鑑を押すって大切な場面だからさ。そしていつか時計のオーバーホールのようにクラブ化してずっと使っていけるそんなシステムを作りたいんだよね。   時短簡便時代のカウンターなのか?! これから価値が上がりそうだぞ手間暇の豊かさ!  ...

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04:金融のプロがとかく斜陽と言われがちな印鑑業界を応援している理由。

04:金融のプロがとかく斜陽と言われがちな印鑑業界を応援している理由。

家安:しかしなかなか印鑑周りに普通はいない面子揃いですよね。笑。でも私としては意外と一番驚いているのが銀行マンの存在。だって通常、銀行マンって渋いですよね、いろんな意味で。(すみません)右肩上がりの業界ならまだしもどうしても先行きが厳しそうだぞみたいなことを言われがちな印鑑業界じゃないですか。そこに投資し、応援しようなんて。なかなか異色かと。言われません?行内でも。 生原:銀行って確かに通常だと現業の補強とその延長にある拡大を支援し、確実なリターンを目指すことって大切なんです。そういう意味では右肩上がりとは言えない業界ですよね、印鑑って。また物としても私は銀行マンですから物の良し悪しというよりも印鑑って通常だと手続きの最たるもので、印鑑文化がどうこうなんて考えたことはなく、物ではなく証明書としてや承認として押したものに意味があるもの世界にいますからね。 家安:それなのにかなり熱烈なサポートを継続されていますよね。どこに可能性を感じているんでしょう? 生原:今までと全く違うマーケットやターゲットに目を向けていることです。原田社長のところは新しいことにチャレンジしておられる。いろんな会社をみてますが、なかなかここまで新しいことに取り組もうとされるのは珍しいことです。もちろん支援にかけた時間とリターンのバランスとかをいう人もなくはないですが、私がこのプロジェクトに可能性を感じているのは、新しい人たちに今までとは違う意味を提案しようとしているところですね。 山下:印鑑って良くも悪くも話題になりましたよね。ペーパーレス云々で。外から入ってくる情報は縮小する業界とデジタル化みたいな話でしたが、そうとは限らないって生原さんも僕達も感じているんじゃないかな。まあ、なんといっても原田社長にあった時のインパクトが強すぎて。原田社長のロックスピリットにやられたというのが正直かもしれませんが。何本か映像を撮らせていただいたのですが原田社長との会話がインスピレーション源になっています。 生原:そんなことは自分では思っていませんけどね。笑 家安:社長の引力に引き寄せられた人たち。webページでもロックな社長の写真が載ってますね。 生原:銀行マンはもちろん経営と業務のサポートをするのでシビアに数字は見ています。でもやっぱり最後は人なんですよ。商材として genjimetal は高価ですよね。そんな高いもの買うのか?と言う方もいらっしゃいますが、私は語りたくなるものは売れると思うんですよ。日本酒もワインもそうですが、人に伝えたくなるものは売れる。名刺に落款印を押していると必ずみんなに聞かれるんですね。すると語る。印鑑ってそんな商品。 家安:生原さんが感じておられる可能性そのものなチーム編成だなあと改めて座談会のメンバーを見回して感じましたよ。だって実は原田社長はアメリカやヨーロッパ市場へもリーチしてますよね。野口さん、アメリカのお話聞かせてください。 野口:テキサスからこんにちは!ということでオンライン参加です。 野口:昨年アメリカのクリスマスギフトシーズンにプロモーションをかけさせていただきましたが、いい結果が出ましたね。やはりアメリカってとても広くて州ごとに違う国ぐらい文化も違ったりしますし、ロスやシスコのような西海岸、NY のような東海岸だと日本文化に馴染みがある人も多いんですが、たとえば私が住んでいるテキサスだと隣の家まで車で30分みたいな感じなわけです。だからアプローチの仕方も色々変えなければいけない。でも知らない人が多いってことは可能性なんですよ。それを実感したのがギフトシーズンですね。 家安:やっぱりアメリカ市場も SNS とかが主流ですか? 野口:もちろんそうなんですが実際に出会う場所を作る事って大切だと感じます。面白いのが意外とアナログなイベントの効果なんですよ。どこの街でもファーマーズマーケットとかやっていて、そこで地元の出店があるわけなんですが、フードトラックで寿司やラーメンを売っていたりして、じわっと日本文化が伝わっていたりする。あとどこでもアニメの力は結構大きくて、アニメの中でハンコを押す場面なんかで「印鑑ってこうやって使うの?!」なんて興味を持つこともあったりします。 家安:日本もアメリカも含めてどう出会いのきっかけを作るかって大切ですね。新しい人との出会いに可能性があるとクリエイターも金融のプロも感じているわけですから。  ...

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05:話題の映像作りとウェブの話。

05:話題の映像作りとウェブの話。

家安:しかし、荒川さんがおっしゃったようになかなかここまでのイメージ映像って珍しいですよね。ましてや印鑑なのに! 原田:このプロジェクトがはじまったときにイエヤスさんに映像撮れる人いないって言ったら、伝統産業をきちんとしっとり伝えられる人と、全く違う切り口で伝えられる人どっちがいいですか?って言われてさ。山下さんたちの作品を拝見して、絶対こっち!って言ったんだよね。 家安:で、山下さんに印鑑の映像なんですがどうでしょう?って打診したら、面白そう、ぜひ!と快諾くださって。 山下: このお話をいただいたときに、単に印鑑が斜陽だからなんとか売らなきゃとか、残さなきゃとかではなくってアートに昇華してあげたかった。原田社長ってロックでしょ?表現者としての原田晶光堂を出したいと思ったんですよね。一番初めに作ったのはアイデンティティーを探す、それが印鑑との出会いというコンセプトを強く伝えた映像。海に潜ったり、砂漠を歩いたり、森を彷徨ってたった一人の自分自身を見つけるように印鑑を見つけるんだってストレートに伝えるもの。 原田:シビれたよね。きたーーって思ったよ。 家安:すごくかっこいい映像であることはもちろんなんですが、何よりも多くの日本人が忘れていたこと、そうか、印鑑って自分のアイデンティティーなんだということに気づけたすごい映像作りだと思いました。そしてそれを嶋津さんが WEB ページとして仕上げてくださって、アイデンティティーを見つけるように自分の印鑑を買うという動線を作ってくださいましたよね。 嶋津:山下の映像が強いのでそれに対してお客さまがエモーショナルな部分を刺激されてきちんとさらに買いやすいようにと作り込んでいきました。 原田:そしてこの勢いで海外版も作ろうぜ!ということになり、日本のマーケットだけでなく、海外の人も買えるようにと英語版をまたお願いしたんだよね。 家安:で、生まれたのが2作目の映像。沖縄ロケで撮りましたよね。   嶋津:社長にも実は出演していただいたりしています。(探してみてね) 原田:印鑑って通常の用途だけでなく、アートを楽しむようにとか自分で作った作品に印を押すとか、いろんな使い方ができて、それがオーダーすると手元に届くって伝わって来るいい映像だよね。 山下:国も人も用途も思っているよりももっと自由だし可能性があると伝えられたらと。 家安:そして最新作ですよ、genjimetal の鏡面に自然が映り込む、これ!CGじゃないんですよね? 山下:CGじゃないです。笑 実際にこの鏡面の印面に写し込んで撮りました。...

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06:中途半端はできないんだよ。だって歴史の一部だからさ。

06:中途半端はできないんだよ。だって歴史の一部だからさ。

家安:genjimetal が話題になって取材も増えた。確かに印鑑の歴史の中ではなかなか進化を遂げた逸品だと思うんですが、改めて genjimetal の価値ってなんだと思いますか? 原田:もちろん構造の素晴らしさは特筆すべきことなんだけど、何よりも職人さんが文字を手書きでデザインしているということだとと思うんですよ。 家安:意外と印鑑の原点!? 原田:そう。文字が消えたり出たりする構造を可能にしようとすると、文字と余白いずれも繋がっている必要がある。でもご存じの通り、印って文字なんですよ。それも歴史と技術、意味に裏付けされた確かなもの。それを制約の中でいかに伝わってきた伝統を踏襲しながら新しい文字を作り出し、それが未来においても新しい伝統となれるかは職人にしかできないこと。ね、小林さん、二宮さん。 家安:印章職人さんとして、金属から文字が出るとかお聞きになって抵抗とかなかったですか? 小林:原田社長から事前にお話を聞いていて、むしろ面白いなと思っていましたよ。だって金属を加工しておられるのも職人さんでしょう?最新技術の職人技と私たちの古い技が出会うこと、面白いですよね。とはいえ、やり始めたら思った以上に大変でしたが! 家安:どんなところが大変だったんですか? 小林:篆書体(てんしょたい)ってはるか昔から存在し使われてきた文字で、それを自分なりに安易に変形できないんですよ。例えばひらがなの”く”を反転させたら意味がわからなくなるでしょう?そのぐらい大変なこと。だって全てに意味がありますからね。容易には崩せませんよね。 小林:でも genjimetal においてはこのシステムを形にするために文字だけでなく余白も全て繋がっている必要があった。すなわち文字に切れ目が適切に入らなければいけない。そうしないと余白部分が島のように取り残される部分が出てしまうから。だからどこを変えるか、判断は自分にかかっていますよね。 原田:今、見ていただいているものって拡大プリントですが実際は18mmという小さな円形の中。その細やかさがわかりますよね。 二宮:小林さんがされたものを全て拝見して、自分も作り始めました。例えばこの枠文字は genjimetalのメカっぽさを尊重して篆書体(てんしょたい)や印相体(いんそうたい)を元に直線的な線使いを行い、枠の淵さえも文字の一部として利用することを行っています。またこの刀文字(かたなもじ)はメタルの持つ硬質な質感がまるで刀みたいだと思い、ハンコではあえて馴染みのない文字ではあるのですが、ハンコの側面に彫る側款と言 ってガリっと削りを入れる刀の感じを残した文字を参考にしてデザインしてみました。 小林:文字作りって今までのセオリーをある意味崩さなきゃいけないからね。 原田:なかなか大変なお願いをしまして、申し訳ない!...

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07: Epilogue 印鑑の周りに集まる趣味人たちの共通した答え。あたりまえなものほど美しい。

07: Epilogue 印鑑の周りに集まる趣味人たちの共通した答え。あたりまえなものほど美しい。

家安:気がつくと音楽や絵画など含めて趣味人たちが多い集まりですね。社長はずっとベースギタ ーされていますし、よくコンサートにも行かれてますよね。 原田:まあそうですね。でも小林さんは相当よ。ギター自体も作っちゃう人だから。 小林:スライドギターのデレク・トラックスに印鑑を作って渡したことがありますよ。 山下:ギターの神じゃないですか!! 小林:中学の時に音楽を聞き出して、レッドツェッペリンにどっぷり。3大ギタリストの公演は全部見てるかな。昔はね今ほど堅苦しくなかったから舞台近くに寄っていってエルトンジョンと握手とかしましたよ。 原田:小林さんは、NHKの番組でピーターバラカンさんと対談してますもんね。世界配信されている!そして二宮さんは実はゴルフのセミプロ。 二宮:30歳手前までゴルフをしてたんですよ。家業が印鑑だったのですが。文字はセンスでしょう?だからいつかきちんと向き合おうと思っていました。 小林:二宮さんのお父さんお母さんとは縁があって、お父さんと私は同級だし、うちの妻とお母さんも同級。 二宮:先輩が身近にいますからね、違うものを作ってやろうと日々思うわけです。 小林:私も思ってきたし、今も一本一本をベストでありたいと思っています。どうすると美しくできるのか、最大限はどこか、これぐらいでいいかなんて思えない。いいものを作ろう、それが職人っていうものなんですよね。 二宮:自由に作れるという点ではたとえば篆刻はクラッシックで印章は作曲に近いのかなと思うんですがどうでしょう? 小林:いやー、どうかな。篆刻は確かに古典基礎はあるけど、意外にもすごく自由。だから難しいのよ。そこが面白くて深くて難しくて。余白が大切で余白が生きているかも大切なので、方寸という世界に宇宙があると昔はよく言われたものですよ。 二宮:ピカソの絵と同じですかね。古典や基礎をきちんとおさえた上で、「やっと子どものような絵が描けるようになった」=崩せるようになったと言ったんですよね。この言葉を知って絵描にはなれないと思ったものです。 小林:俳句もそうだけど子どものようには作れないんですよ。大人はね、思惑が出ちゃうから。稚拙さは難しい。ギラギラと技を見せつけるものはいやらしいでしょう?見ていて飽きるんです。だから何気ないものがいい。展覧会もなんでもそう。何回見てもいいものはいい。だからハッとさせなくても、見ていてずっといいと感じるものを作ることが大切なんです。 原田:驚きやギミック、小手先は一過性。今、印鑑って難しい時代であるからいろんなことをやりたくなるし、もがきたくなる。でも改めて文字なんだなあと。ずっと使うものだから、自分自身だからこそ飾らず正直にずっといいものをきちんと作って渡していくこと、その基本に立ち返りたいですし、こうやって新しい挑戦を地に足をつけて一緒にやってくれるこの仲間の存在が原田晶光堂の一番の力だと改めて思うよね。 家安:山下さんや嶋津さんが作ってくださっている映像の世界もそう。印鑑なのにっていう驚きがまず来るかもしれないですが、何度見ても私は見飽きないんですよね。なぜか。それは本質的だからだなあと。原田晶光堂の取り組みって奇を衒ったものではなくて、本来印鑑が持っていた役割を見直していることなんだと今日のお話でも感じましたよ。だからバンカーの生原さんも可能性を感じているし、一般的に印鑑と縁が薄そうな若い世代たちがこうやって惹かれて集まってきている。最近言われていることではなくって本質、これが大切ですよね。 原田:常に「バカやろー」って思ってやってきたんだよね。この会社引き継いだときから色々あって難しいことも多いんですよ、あたりまえにね。 原田:でも、きれいに言い換えると反骨根性。やってやりたいなと思ってきたんです。だってこんな素晴らしい文化と職人さんたちがいて、この市川三郷町(旧六郷町)ってハンコの街と呼ばれてきた場所ですよ。時代が変わったらその時代にとってどんな価値があるか挑戦し続けたいじゃない? 家安:具体的にどんなことを思ってます?...

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